ホームページ制作会社を変更するときの引き継ぎ注意点|データと管理権限の確認が先

ホームページ制作会社を変更したいとき、最初にやるべきことは「新しい業者を探すこと」ではありません。まず確認すべきは、自社が持つべき「3つの資産」がどこにあるかです。ドメイン・サーバー・サイトデータの名義と管理権限を握っているのが旧業者なのか自社なのかを確認しないまま動き出すと、引き継ぎの交渉が難航し、最悪の場合は既存サイトのSEO評価がゼロにリセットされます。
制作会社を変えること自体は難しくありません。準備の順序を間違えることが、後悔の原因です。この記事では、制作会社の変更を検討している会社の担当者が、引き継ぎで失敗しないために事前に確認すべきポイントを、現場で見てきた視点から解説します。リニューアルを機に制作会社を変える場合、費用の相場を先に把握しておくと交渉がスムーズです。ホームページリニューアルの費用相場と判断基準もあわせて確認してください。
制作会社を変更する前に確認する3つの自社資産

制作会社の変更を進める前に、まず現状把握が必要です。引き継ぎが難航するほとんどのケースは、「どのデータが誰の名義にあるか」が分かっていない状態で動き出したことが原因です。確認すべき自社資産は3つです。
①ドメインの名義と管理権限
ドメインは、あなたの会社のURLの根幹です。「example.co.jp」のような文字列の管理権限が旧業者名義になっていると、業者変更後も旧業者に毎年更新費用を払い続ける構造になります。最悪の場合、旧業者が更新を止めてドメインが失効し、長年育ててきたSEOの評価がすべてなくなることがあります。
確認方法はシンプルです。ドメイン管理会社(お名前.com・ムームードメイン・さくらのドメインなど)にご自身でログインできれば自社管理。ログイン情報を旧業者しか知らないなら、まず情報を取り戻すことが最初の仕事です。変更を切り出す前に、この情報を旧業者に確認してください。
②サーバーの契約者と接続情報
レンタルサーバー(さくらのレンタルサーバー・エックスサーバー・ConoHaなど)も、誰の名義で契約されているかを確認します。旧業者名義のサーバーに乗っている場合、移管作業が発生し、費用と期間がかかります。自社名義であっても、FTP(ファイル転送)の接続情報を旧業者だけが知っている状態なら、引き継ぎ時に情報提供を求める必要があります。
サーバーの名義は、請求書の宛先で確認できます。請求が旧業者に行っているなら、旧業者名義の可能性が高いです。
③サイトデータとCMS管理者権限
WordPressなどのCMSを使っている場合、管理者でログインできるアカウントが自社にあるかを確認します。旧業者だけが管理者アカウントを持っていて、自社はライター権限しかないというケースも実際にあります。この状態では、引き継ぎ先の業者がサイトの設定変更やテーマの修正ができません。
管理者アカウントの有無は、WordPressの管理画面(/wp-admin)にログインし、ユーザー一覧を確認することで分かります。ロールが「管理者」になっているアカウントが自社に存在するか確認してください。
これら3つのうちどれか1つでも「確認できていない」なら、変更を進める前に現状把握から始めてください。把握できた段階で、次のステップに進みます。
引き継ぎで最初にやること:必要なデータの洗い出し

旧業者に「引き継ぎをお願いします」と伝えるだけでは、何も動きません。受け渡してほしいデータをリスト化して提示することが、引き継ぎをスムーズに進める最初の一手です。渡してもらうべきデータは次の4種類です。
サイトデータ一式(ソースファイル)
HTML/CSS/JavaScript・WordPressのテーマファイル・プラグインの設定・画像ファイルが含まれます。これらはFTPでサーバーに接続すれば取得できますが、旧業者にダウンロードしてZIPで渡してもらうのが現実的です。「サイトの全データをください」という曖昧な依頼より、「ソースファイルをZIPで固めて渡してください」の方が伝わりやすく、受け渡し漏れも防げます。
データベース(DBダンプ)
WordPressの場合、記事の内容・固定ページの設定・メニュー構成はデータベースに格納されています。サーバーを移管する際にはDBのエクスポートファイルも必要です。「DBダンプを.sqlファイルでください」と依頼してください。データベースを渡してもらえれば、コンテンツをゼロから打ち直す手間がなくなります。
ドメイン・サーバーのアカウント情報
ドメイン管理会社のログイン情報・レンタルサーバーのコントロールパネルのID/パスワード・FTP接続情報(ホスト名・ユーザー名・パスワード・ポート番号)を一覧にして受け取ります。新業者がサーバーにアクセスするために必要な情報を、まとめて提供してもらうよう依頼します。バラバラに聞くより、一覧のフォーマットを自社で作って渡す方が確実です。
Googleアナリティクス・サーチコンソールの権限
アクセス解析ツールの権限も自社アカウントに移管します。旧業者と共有していたGoogleアカウントを使っていた場合は特に注意が必要です。長年の閲覧履歴やコンバージョン設定を引き継げなくなるためです。自社のGoogleアカウントを作成し、旧業者から「管理者」権限で追加してもらったうえで、旧業者のアカウントを削除する流れが安全です。
制作会社変更を旧業者へ切り出すときの伝え方

制作会社の変更で多くの担当者が最も迷うのは、旧業者への切り出し方です。長い付き合いがある場合は特に、言い出しにくさを感じることがあります。しかし、伝え方を誤ると引き継ぎ作業に非協力的になられ、データの受け渡しが止まる事態にもなります。
事前に契約内容を確認する
まず現在の契約書を確認します。保守・管理の月額契約が継続中なら、解約予告期間が定められているはずです。「1ヶ月前までに書面で通知」などの条項が多く、このタイミングを無視すると違約金が発生することがあります。解約の手順を契約書で確認してから、旧業者に伝える日程を決めてください。
感謝と短い理由を添えて伝える
「今後は自社内で管理できる体制にしたい」「別の会社に制作を依頼することになった」など、理由は短く明確に伝えます。旧業者への批判は避けてください。感謝の言葉を添えつつ、方針転換として伝えるのが関係を最小限に傷つけない方法です。旧業者が気分を害すると、引き継ぎの際に「対応コストが発生する」「データの準備に時間がかかる」という返答になることがあります。引き継ぎを円滑に進めるためにも、別れ際の伝え方は重要です。
メールで記録を残し、期限を明記する
解約の意思はメールで伝え、文書として残します。「〇月〇日をもって契約終了としたい」「引き継ぎに必要なデータのリストを別途送るので、〇月〇日までに対応をお願いしたい」という内容を明記してください。口頭だけでは後からトラブルになりやすく、「そんな話は聞いていない」となりかねません。
引き継ぎの期限を具体的に伝えることで、旧業者側も準備のスケジュールを組みやすくなります。期限がないまま「よろしく」と伝えると「まだ準備中です」が何ヶ月も続くことがあります。「〇月〇日までに対応をお願いします」という一文が、引き継ぎを前に進める最大のポイントです。
引き継ぎ後に旧業者のアクセスが残るリスク

引き継ぎが完了したように見えても、旧業者のアクセス権が残り続けるケースが現場では珍しくありません。これは単なる「うっかり」ではなく、情報セキュリティ上のリスクです。業者変更の最終工程として、必ず「施錠確認」を行ってください。
WordPressの管理者アカウントを削除する
旧業者が「admin」などの管理者アカウントでWordPressにログインできる状態のまま放置されることがあります。管理者権限があると、サイトのコンテンツ変更・プラグインの追加・他のユーザーの削除まで何でもできます。引き継ぎ後は、旧業者名義のアカウントをユーザー一覧から削除するか、パスワードをリセットして使えない状態にしてください。
FTPのパスワードを変更する
サーバーへのFTP接続情報を旧業者が把握しているなら、FTPのパスワードを変更します。サーバー会社のコントロールパネルからFTPアカウントのパスワードを変更するだけでアクセスを遮断できます。変更後は新業者に新しいパスワードを共有します。数分で完了できる作業ですが、忘れがちなポイントです。
Googleアナリティクスとサーチコンソールのユーザーを削除する
旧業者をGoogleアナリティクスやサーチコンソールのユーザーとして登録していた場合、引き継ぎ後も旧業者がデータを閲覧できる状態が続きます。Googleアナリティクスの管理画面 → アカウントのアクセス管理から旧業者のメールアドレスを削除してください。
引き継ぎ後の施錠確認チェックリスト
引き継ぎが完了したら、以下をひとつずつ確認します。
- WordPressの管理者一覧から旧業者のIDを削除した
- FTPのパスワードを変更した
- ドメイン管理会社のパスワードを変更した
- レンタルサーバーのコントロールパネルのパスワードを変更した
- Googleアナリティクスのユーザーリストから旧業者を削除した
- サーチコンソールの権限から旧業者を削除した
- メールアカウント(info@など)のパスワードを変更した
これらを「引き継ぎ後の施錠確認」として、業者変更の最終工程に必ず組み込んでください。
「引き継ぎができない」と言われたときの4つの対処法

旧業者から「独自システムで作っているので引き継ぎはできません」と言われるケースがあります。この言葉で諦めてしまう前に、確認すべきことがあります。「できない」と言われた状況でも、打てる手は複数あります。
①「できないのか、しないのか」を確認する
技術的に不可能な場合と、対応コストがかかるために断っている場合は異なります。「どの部分が引き継げないのか」を具体的に確認してください。多くの場合、HTMLと画像のエクスポート・ドメインとサーバーの移管は可能です。独自CMSであっても、HTMLとコンテンツは取り出せます。「引き継ぎができない」という言葉の実態は、「独自CMSの移行には費用がかかる」という意味であることが多く、費用を払えば対応してもらえるケースがほとんどです。
②バックアップデータの提供を求める
サイトのHTMLと画像のバックアップは、システムが独自であっても提供を求められます。これがあれば、新業者がゼロから作り直す際のリファレンスになります。「元のサイトのデータを参照用に渡してほしい」という依頼は合理的です。また、過去の打ち合わせ資料・デザインデータ・テキスト原稿なども、新業者への引き継ぎに使えます。これらの制作物は発注者側の資産であることを確認して求めてください。
③ドメインの移管は法的に要求できる
ドメインが旧業者名義であっても、契約書に「制作物の権利は発注者に帰属する」という条項があれば、移管を法的に要求できます。契約書を見直し、権利帰属の条項を確認してください。そのような条項がなくても、交渉によって移管費用を払って引き取ることができます。旧業者名義のまま解約すると、旧業者がドメインを更新しなくなるリスクがあるため、先に名義変更の交渉を進めることが重要です。
④URLが変わる場合は301リダイレクトを設定する
どうしても旧URLを維持できない場合は、新しいサイトを新URLで公開することになります。このとき、旧URLから新URLへの「301リダイレクト」を設定することで、検索エンジンの評価を可能な限り引き継げます。旧サーバーが使える期間中にリダイレクトを設定することが重要で、これを行わないと検索順位がリセットされ、アクセスが大きく落ちます。新業者にリダイレクト設定の対応を依頼し、設定後はGoogleサーチコンソールでインデックスの移行状況を確認してください。
まとめ|制作会社を変えるなら「資産確認」から始める

制作会社の変更と引き継ぎは、準備の順序が重要です。「新しい業者を探す」より先に、現状の把握から始めることが後悔しないための鍵です。
- ドメイン・サーバー・CMSの名義と権限を先に確認する(これが把握できていないと交渉の前提が崩れる)
- 受け渡すデータをリスト化してから旧業者に提示する(口頭でなく文書で依頼する)
- 変更の意思はメールで伝え、引き継ぎの期限を明記する(曖昧にすると引き延ばしになる)
- 引き継ぎ後は旧業者のアクセスをすべて遮断する(施錠確認チェックリストで漏れを防ぐ)
- 「引き継ぎできない」と言われても諦めない(バックアップデータとドメイン移管は要求できる)
適切に進めれば、制作会社の変更は難しい手続きではありません。問題が起きるほとんどは「現状を確認しないまま動き出した」ことが原因です。次の制作会社を選ぶ際の判断基準についてはホームページ制作会社の選び方に整理しています。また、個人のフリーランスに依頼する場合のリスクについてはWEB制作をフリーランスに依頼するリスクと保守体制の確認方法も参考にしてください。
デザインパルカでは、制作会社の変更・引き継ぎの相談から受け付けています。「今の業者に引き継ぎを断られた」「ドメインが旧業者名義になっている」という状況からでも整理できますので、お気軽にご連絡ください。








